こんにちは、やずや式少数盛栄塾で編集長をしております妹尾満隆(せのおみちたか)です。
今回解説するのは、PPM(プロダクトポートフォリオマネジメント)分析になります。以下はPPM分析で統一します。
商品には力があります。その商品(事業)が魅力的なものであれば、あなたの会社に大きな利益をもたらしてくれますし、そうでなければ足を引っ張ってしまいます。
それでは詳しく見ていきましょう。
PPM分析とはアメリカのコンサルティング会社である、ボストン・コンサルティング・グループが1970年代に提唱した分析手法であり、原型は英語なのですが日本人が理解しやすいように、「花形商品」などのように日本語で割り当てられています。
その分析方法は、2つの軸である「市場成長率」と「相対的な市場占有率」によってどれくらい優位な立場にある商品なのかを可視化していきます。
すると商品(事業)のそれぞれの現状が分かり、今後取るべき戦略が見えてきます。
その結果、複数の商品(事業)にどのように経営資源を分配していくべきか、という検討をすることが出来るようになるのです。
フレームワークで分類される4つの指標は下記になります。
・花形(Star)
・金のなる木(Cash Cow)
・問題児(Problem Child)
・負け犬(Dog)
それではそれぞれの意味を見ていきましょう。
市場成長率、市場占有率が高いということで、その名の通り「花形」と言えます。
しかし、競争が激しく市場のシェアを維持するのには積極的な投資が必要になるのでコストがかかります。
成長中の市場に投資を行い、市場シェアを取ることが出来れば成長に陰りが見えてきた場合でも、必要となる投資資金は減り、その業態からキャッシュを生む事業になります。(金のなる木)
その商品(事業)の成長性は穏やかになってるため、大きな飛躍は期待できないもののコストがかからないわりに利益を大きく残すことが出来るのが特徴です。
その事業自体に成長性がないので、新規参入が少なく限られた会社だけで市場を分け合うので、市場占有率が高いということで安定して利益を出していくことが出来る部分なのです。
市場の成長率は高いものの、市場のシェアが低いため利益を出すことが出来ない部分です。一度シェアを奪われてしまうと、基本的にはそれを覆すのはかなり難しいです。
例えば、2020年9月現在ですと、成長性が高い事業にフリマアプリがあります。
フリマアプリと言えばメルカリですが、そのほかにもラクマとペイペイフリマがあります。
1度みんながメルカリを使ってる状態が浸透してしまうと、ご存知の通りラクマとペイペイフリマはほとんど市場には浸透しないのです。
花形商品にするために、浸透させる(市場シェアを獲得する)のには莫大なコストがかかりますし、難しい場合は撤退も視野に入れないといけません。
どこまでを投資の限界として、どこからが撤退ラインかを決めて置かなければ事業への投資だけが増えて赤字の事業になってしまいます。
負け犬は成長性もないし、市場のシェアも握れてないので利益が上がらないしコストもかかりません。
問題児よりは切り捨てが出来る良いポジションですので、すっぱりと撤退するのがベストでしょう。
そこで使っていた資金を成長性がある部分や、シェアを取りに行きたい部分に回すことによって他の商品(事業)の補完が出来ます。
オリンパスを見てみましょう。
オリンパスといえばカメラ!というイメージがある方は多いのではないでしょうか?
しかしオリンパスはデジタルカメラなどの映像事業を今年の9月に投資ファンドに売却します。
なんでそんなことをするのかと言いますと、そもそもオリンパスはカメラを売ってるけど、シェアを握れてる訳でもなくそこが稼ぎ頭ではないしどっちかっていうと足を引っ張ってた事業(赤字)だったからです。
だったら、もうこの映像事業(カメラ)は捨てて強いところをさらに強くしようという判断に至った訳なのです。
では強いところとはどこでしょうか?
それは内視鏡です。
実はオリンパスは内視鏡で世界シェア1位を誇っています。
ちなみに富士フィルム、ペンタックスの3社で分け合ってるのですがオリンパスはその3社の中でも7割のシェアを持ってるのでダントツなのです。
このように、足を引っ張る負け犬事業(映像事業であるデジタルカメラなど)を切り離し成長性がありながらもシェアを確保できてる花形事業(内視鏡)に力を入れることでより利益をあげることが出来る会社に生まれ変わったのです。
根本的な問題として、自社に「花形」か「金のなる木」に位置する商品(事業)がある前提でないと資源の分配が出来ません。
なぜなら、その2つから生まれるキャシュが次の「問題児」への投資に繋がるからです。
これらのキャッシュを利用して、企業の将来に対する次の事業を作り出さなければなりません。
問題児には市場シェアの獲得が出来るかどうかで、花形になれるか会社の利益を大きく消費するか、の2つになりますので、ここでの事業の将来性に対する選択と集中が重要になります。
このように、花形、金のなる木から生まれるキャシュを利用して、問題児に投資をしていくことによって、好循環が生まれ会社の事業の様々なところからキャッシュを生み出せる体質に変わっていくのです。
自社が築き上げてきた、技術やノウハウがあるはずなので、それを生かした別の違う事業に投資するのが理想的です。
例えば、富士フィルムを見てみましょう。
富士フィルムはその名の通り、フィルムを作る会社でした。
しかし、写真はフィルムではなくデジタルに以降しだした時にそのままフィルムにこだわらず、その技術を生かして化粧品の事業に参入したのが富士フィルムです。
全く別の事業のように終われますが、ナノテクノロジーなどの技術はそのままヘルスケアの事業に活かすことが出来たため、フイルム事業を縮小して化粧品への投資を拡大させて成功したのです。
自社の技術やノウハウがあるのであれば、次の事業への参入が比較的低くなります。それを全く未知の世界の事業に投資をしてしまうと撤退のリスクが高まってしまうでしょう。
PPM分析は、自社の経営資源をどこにどのように配分していくかを見るためのポートフォリオになります。
上記のフレームを確認すると、どのように経営資源を配分すればいいかが分かってくると思います。
重要なことは、全く未知の事業に進出するのではなく自社の技術やノウハウが他の分野で活かせる部分で切り開いていくことですね。