こんにちは、やずや式少数盛栄塾で編集長をしております妹尾満隆(せのおみちたか)です。
この記事では、マーケティング業界にいればよく聞く”コアコンピタンス”について解説をしていきます。
コアコンピタンスとは、企業の持つ『自社ならではの価値』を顧客に提供する能力のことを言います。
これは、ロンドン・ビジネススクールの客員教授で、経営論や戦略論の専門家であるゲイリー・ハメルさんとC.K. プラハラードさんが提唱した概念になります。
コアとは『中核』を意味します。
コンピタンスとは『能力や実力』という意味になります。
ですので、コアコンピタンスとは、これら(中核の能力)を合わせて競争優位を作り出していくということなのです。
両氏は実例として、ホンダのエンジン技術、ソニーの小型化技術、シャープの液晶技術などを挙げています。
・我が社の技術力は強みである
・我が社のマーケティング部は強みである
というのは、状態を語っています。
しかし、それは自然発生的に作り上げられるかというとそうではありませんよね。
技術力を持ってる人を集めればそうなりますが、新しい技術を生み出す力が必要な訳です。
先ほど紹介した、ソニーの小型化技術を見てみましょう。
ソニーのウォークマンという商品がコアコンピタンスなのではなく、ウォークマンを世の中に出すことが出来たソニーならではのノウハウや技術力、マーケティング能力がコアコンピタンスだと言えるのです。
要するに、それぞれのバリューチェーン(開発力、企画力、技術力、サービス)が持つ底力(何かを生み出す源泉)のことをコアコンピタンスというのです。
他社では真似することの出来ない、コアコンピタンスを見つけ出し(創造し)経営戦略の中に落とし込むことをコアコンピタンス経営と言います。
ではコアコンピタンスと言えるための、条件である下記の3つを見てみましょう。
・顧客に利益をもたらす自社の能力(実力)
・競合他社に模倣されない自社の能力(実力)
・複数の商品・市場に推進できる自社の能力(実力)
になります。
それではここから、それぞれを詳しく見てみましょう。
顧客の為になる、利益やメリットを与えることが出来る能力のことです。
他社より優れた商品やサービスであったとしてもそもそも使わない、操作が複雑すぎて使い方が分かりにくなどのように顧客の利益(利便性)に繋がっていないのであればそれは自社の利益には繋がらないからです。
自社の持つ独自の強みを生かして、それを商品に組み込むことで顧客の利便性が向上し、顧客の満足度が上がるところまでが、コアコンピタンスの条件と言えるでしょう。
企業が顧客の方を向いてるかどうかを見るための重要な条件です。
競合他社が簡単に真似することができない能力や実力のことを言います。
新しいビジネスモデルを考えたとしても、それが参入障壁が低くある程度の資金があれば模倣されてしまうのであれば、コアコンピタンスとはなり得ません。
どのよにすれば、コアコンピタンスに近ずくかというと熟練した技術者、創業100年の老舗、などのように一朝一夕では手に入れることの出来ない状態を作り出すことが出来れば、コアコンピタンスの条件に当てはまります。
複数の商品や市場で通用する能力であることです。
特定の商品や市場だけでしか通用しないのであれば、それは環境の変化に対応することが出来ないと言えます。
例えば、富士フィルムはフィルムの会社で有名でしたが、今は化粧品の会社に生まれ変わっています。
フィルムで培ってきた技術を、衰退するフィルム業界ではなく成長中の化粧品業界に応用することで成功した例です。
これも富士フィルムというブランドがあったからこそ、それを別の市場や商品に応用できたと言えますよね。
似たようなニュアンスでケイパビリティやVRIO分析があります。
これらも自社にどのような強みがあるのかを、分析する方法になります。
結局、言い方だけが違うのかというともそうではありません。
ケイパビリティは開発、生産、管理、販売などのバリューチェーンをまたがる組織的な強さの事を言います。
コアコンピタンスは、それぞれのバリューチェーンの中での特定の強みを表します。
ですので、コアコンピタンスとはVRIO分析の考えに近く、コアコンピタンスの集合体がケイパビリティと考えると分かりやすいでしょう。
コアコンピタンスを見極める5つの方法があるのですが、これらはVRIO分析の見極め方とほとんど同じになっています。
VRIO分析については下記の記事で詳しく解説しております↓
それではコアコンピタンスを見極めるの5つ方法を見てみましょう。
1.移動可能性(Transferability)
上記で説明した富士フィルムのように、技術を他の商品や市場に応用できることが出来れば、コアコンピタンスになり得ます。
その市場、その商品にしか応用が効かないのであれば、利用する範囲が狭まり強みになるとは言えないからです。
2.模倣可能性(Imitability)
模倣されやすいかどうか、と言う点の分析になります。
一朝一夕で身に付けることが出来ないものなどがそれに当たります。
先ほども紹介したように、長い期間を通して培った技術、企業の歴史的背景などは、模倣困難な場合が多いです。
「創業明治元年」というのは、これから作ろうとしても不可能であり今更時を遡って模倣することはできないからです。
職人さんの技術やノウハウもそれに含まれます。
3.代替可能性(Substitutability)
そのままの意味で、代替えが効かない技術や能力になります。
自社の強みである技術や能力が、競合他社と置き換えることが出来ないことです。
例えば、グーグルのアルゴリズムの仕組み、日本の数社の企業しか持ってない高純度フッ化水素の技術などがそれに当たるでしょう。
4.希少性(Scarcity)
他社が持ってないような、珍しい材料や独自の生産技術の経営資源を持ってるかどうかと言う点で分析する要素です。
基本的には代替可能性、模倣可能性をクリアしていれば希少性もクリアしています。
5.耐久性(Durability)
短期間で強みが消滅せずに、長期に渡って強みを維持できる競争優位性を保てるかというところです。
例えば、腕時計を見たときにアップルからApple Watchが発売されました。
合理性から見れば、Apple Watchは心拍数を測れたり健康的な指標を見ることが出来るので、シェアはApple Watchが大きく伸ばすかと思われていましたが実はそうではありませんでした。
Apple Watchに搭載された機能は魅力的であるのは事実なのですが、実際には人は同一化を好まず自分を表現するアイテムとして、腕時計をしてる人もたくさんいるからです。
ですので、今でもブライトリング、オメガ、ロレックスなどのブランドのデザインやストーリーに惹かれてそれらの時計をする人々はたくさんいるのです。
この耐久性は見方を変えれば、ブランド力も大きく含んでいると言えますね。
ざっくり言ってしまうと、コアコンピタンスとは他社が真似することが出来ない自社が持つ強みということになります。
しかし、それは機能的な強みというよりもそれぞれのバリューチェーンの強みや、新しい物事を生み出すことが出来る仕組みなどのように組織的な強さのことを言います。
これは例え、社長が変わったとしても企業の文化や哲学は継承され、企業が半自動で進むべき方向に進んでいける力という表現も出来ますよね。